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コラム

プロセス評価のつくり方(後半)― 評価の設計

 

前回はプロセス評価のつくり方の前半として、【プロセスの定義】 = 標準プロセスを決める について解説しました。今回は引き続き後半として、【プロセス評価の設計】の概要を説明します。⑤人事制度の現状分析 ~ 課題と目的の整理 ⑥評価要素を決める ⑦評価シートを設計する ⑧実施要領をまとめる というステップで説明します。

 

プロセス評価設計の2つのパート

 

前回のコラム(プロセス評価のつくり方(前半)― プロセスの定義)でも説明しましたが、プロセス評価設計の手順は【プロセスの定義】と【プロセス評価の設計】の2つのパートに分かれます。今回は(後半)【プロセス評価の設計】の解説です。

今回初めてご覧になる方もいるかと思いますので、念のため前・後半の流れを再度記載します。すでに前回コラムを読んで覚えていらっしゃる方は、この部分は読み飛ばしてもらってけっこうです。

 

(前半)【プロセスの定義】

①組織の課題と目的を整理する 

②業務プロセスを3つの軸でとらえる 

③4つのステップでプロセスを標準化 

④標準プロセスを見える化ツールにまとめる

→ 前回のコラム(プロセス評価のつくり方(前半)― プロセスの定義)で解説済。

 

(後半)【プロセス評価の設計

⑤人事制度の現状分析 ~ 課題と目的の整理

⑥評価要素を決める

⑦評価シートを設計する

⑧実施要領をまとめる

 → ここが今回のコラムの解説対象。

 

 

前回からの流れも説明したので前置きが長くなりましたが、ここからが今回の後半部分の説明となります。

 

(後半)【プロセス評価の設計】

 

⑤ 人事制度の現状分析 ~ 課題と目的の整理

 

(前半)【プロセスの定義】の手順①で、プロセスを標準化・見える化するために組織の課題と目的を整理しましたが、標準プロセス整理とプロセス評価導入の課題は必ずしも一致しないので、改めて人事評価制度についての現状分析を行い、課題と目的を整理します。

 

今であれば、人事評価の課題の例としては、以下のようなものが挙げられます:

■テレワークで社員の働きが見えず評価が難しい

■ジョブ型を検討したいが職務定義書の作成が難しい

■成果主義を導入済だが、課題があるので見直したい

人事評価が昇格や給料を決めるだけのものになっていて、業績改善とリンクしていない

■イノベーションを起こせるような人財を育て評価したい

 

その他の普遍的な課題例としては、【人事評価の課題トップ10】はこちらをどうぞ → 〝進化したプロセス評価®〟による人事制度・評価コンサルティング 

⑥評価要素を決める

 

従来の成果主義などの評価項目は、主に成果と定性要素です。一般的にはプロセスも定性要素のひとつとして見ますが、協調性、コミュニケーション、創造性など、本来のプロセスとはかけ離れた精神論的・抽象的な項目が多いので、どうしても好き嫌いなどの主観的な判断になり不満が発生しやすくなります。

 

そこで進化したプロセス評価®では、成果に結びつきやすい標準プロセスを明確にした上で、まだ結果に至っていない途中のプロセスへの取組も成果の一部として評価の対象とします。そして、対象となる標準プロセスにかけた時間や回数、あるいは、結果に結びつくKPIなどをプロセス評価項目とします。

 

会社や組織、その時々の課題や目指す方向性により、設計内容は変わってきますが、進化したプロセス評価®の基本的な構成要素としては、(I)実績 (II)プロセス指標 ()標準プロセス ()定性項目 をおすすめしています。

 

(II)プロセス指標()標準プロセスは、あまり一般的な言葉ではないので補足します。

まず(II)プロセス指標というのは、簡単にいうとKPIのことです。だったら単純にKPIでよさそうですが、プロセス指標と言い直す理由は、厳密にはプロセス指標とKPIは異なり誤った運用も多いためです。

一般的なKPIは「重要業績評価指標」と言いながら、実際は結果の数字に近い‶結果KPI〟的なもの(結果指標、遅行指標)が多くその数値を計測~分析してもほとんど意味がありません。

実際のビジネスでは、成果の先行指標が求められるので〝行動KPI〟の方が適切です。そこで、KPIとの違いを意識してもらうために、プロセス指標という表現を使って区別することをおすすめします。

詳しくはこちらの関連サイトもどうぞ → KPIの考え方に関する違和感

 

もうひとつの()標準プロセスは前回も解説しましたが、「業績アップや生産性向上のために、会社や組織が整理し標準化した標準プロセス」のことでしたね。進化したプロセス評価®の特徴は、標準プロセスをプロセス評価と連携させて実施効果を高めるという点にあるわけですから、標準プロセスへの取り組み具合をしっかり評価面でも反映してその実践・徹底を支えていこうと考えるのは自然です。

 

⑦評価シートを設計する

 

以下(I)()それぞれの要素について、進化したプロセス評価®の具体的な評価項目の設定イメージを、営業の例を紹介しながら解説します。ちょっと見にくいかもしれませんが、評価シートの該当部分を本文と一緒に見ながら読み進めてください。

 

コラムの図では見にくいかもしれません。プロセス評価シートのサンプルをじっくり見たい、興味があるという方に、拡大版(PDF版)をプレゼントしますのでよろしければお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

 

(図)プロセス評価のイメージサンプル

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(I)実績>(営業であれば、売上や利益など)

 

成果や実績は従来の評価制度と同じように見ます。読者の方も自社の評価シートで見慣れている内容だと思いますので、実績評価に関する細かい説明は割愛します。

異なるのは、評価のウェイト、図でいうと左上の  (I)実績の中の赤い四角()で囲った「実績比率」のところが100%ではないという点です。結果の数字:プロセス要素の割合は、役職により異なりますが、一般社員で、2080 0100、中間マネージャクラスや部長以上の営業リーダークラスで、5050 8020といったところでしょうか。ちなみに、結果の数字しか見ない評価の場合は、この比率が1000ということです。

 

(II)プロセス指標>

 

前述したプロセス指標(≠KPI)を評価シートに反映します。この「プロセス指標」と次の「標準プロセス」への取組を評価項目として反映するところが、進化したプロセス評価のキモとなります

図の左側中ほどの  (II)プロセス指標のところを見てください。「訪問件数」「新規顧客開拓数」「案件数」「提案・見積数」「成約数」をプロセス指標として計測し、目標に対する達成数や率を評価します。

ここでのポイントは「成約数」以外はまだ結果に至っていない、すなわち、受注していないプロセス指標も評価対象にしているというところです。「結果」を出すためには水面下で見えない地道な「プロセス」の積み重ねが必要なので、まだ結果としての数字としては表れていなくても、成果の一部として評価するわけです。

 

()標準プロセス>

 

標準プロセスの中でも特に重要だと考えられる【活動】(社外活動と社内活動)にかけている時間、あるいは、回数を計測して評価対象にします。同じく左側下の方の  ()標準プロセスを見てください。図の例では「顧客開拓」「ヒアリング」「決裁者向け提案・プレゼン」「クロージング」「受注・失注分析」にかけた時間を具体的な項目例として記載しています。 

まだ結果に至っていないが、会社や組織が求めていること(標準プロセス)をコツコツとやっているのであれば、正しい努力(評価される側が認めてもらいたいがんばり)として評価で報われることになります

 

<()定性評価>

 

(I)実績 (II)プロセス指標 (III)標準プロセスだけではカバーしきれない評価要素もあります。これまでの人事評価と同様、進化したプロセス評価®においても、定性評価を評価項目として盛り込む場合も多いです。とはいっても、そのレベル感がぜんぜん違います。

 

通常の人事評価とは異なる点をひとつ挙げましょう。普通の定性項目の場合、その評価基準や内容の説明は2~3行程度の抽象的な文章だけです。このような抽象的な定義ではいかようにでも解釈できるので、公正な評価は難しいもの。

そこで、進化したプロセス評価では、あやふやな評価項目にしないために、業務タイプ・役職別に具体的にまとめた業務の設計図を用意しておきます。「標準プロセスの手引き」(以下“手引き”)がその役割を果たします。手引きは、人事マネジメント的にいうと、進化したコンピテンシーモデル(営業的にいうと、できる営業のノウハウ)ともいえるものです。

 

図の今度は右側、中ほどの  ()定性評価のところに例を示しました。図では、「チーム営業」「情報共有」「部門間連携」「セルフマネジメント」という4つの項目を挙げていますが、その内容や言葉はすでに手引きの中で、1~2段掘り下げてた形で明確化されているのです。手引きに記載された内容にリンクして、定性評価項目が設計されているというわけです。

パッとみた評価シート上の言葉は似ていても、3次元プロセス分析法®でしっかりと標準プロセスを定義した上での定性項目と、業務の設計図が存在しないまま〝何となく〟設計した定性項目とは、その具体性や定義の階層の深さが全く異なるので月とスッポンくらいの差があります。

 

⑧実施要領をまとめる

 

最後に人事評価の基本事項や運用ルールをまとめた「実施要領」を作成します。どうしても評価シートに目がいきがちで、新しい評価制度を入れる目的や実施ルールをよく読まない / 説明しないケースが多いのですが、人事は究極のマネジメントツールでありそのエッセンスが実施要領に込められています。実施要領は人事担当に任せきりにせず、経営陣も社員に求める人財像や思いがちゃんと反映されているか確認しながら、しっかり用意してください。

 

具体的には、以下のような項目を網羅します:

・プロセス評価導入検討の背景と目的

・目指すべきゴールと、そのために求められる人財像

・中期事業計画などの経営が導こうとする会社の方向性との関連性

・従来の人事評価制度との違い、新しい人事評価の特徴や変更点

・具体的なプロセス評価項目とその詳細 ― 評価対象となるプロセス指標や標準プロセス

・定性項目 ― 標準プロセスの手引きで具体的に定義された内容

 

 

 以上、2回にわたりプロセス評価のつくり方を解説しました。一般的なプロセス評価 = 抽象的で曖昧なプロセス評価とは異なるので、少し戸惑われたかもしれません。しかし、プロセス評価を「評価のための評価」ではなく、会社の業績アップに貢献できる形で進化させるためには、このような設計手順をとるのが「本来のプロセス評価」です。コラムへのコメントや質問等ありましたら、遠慮なくご連絡ください。反対意見やもっと良いやり方の提案など大歓迎です。

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

プロセス評価にご興味のある方、ジョブ型雇用を導入したいが検討で悩まれている方は こちらからご連絡ください。

 

⇨ コラムへのご意見やご感想は info@flecrea.com へ

 

 

()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2021年09月27日)

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