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仕事をプロセスに「分解」すれば本質が見えてくる

JTB 様導入事例紹介

JTB様は2014年から5年にわたり、プロセス見える化やプロセス評価のコンサルティングを継続してご活用いただいています。推進のキーマンにフリクレアのコンサルティングの印象や成果について聞いてみました。

JTB 総研
山下真輝部長、藤田研究員
聞き手
フリクレア代表取締役社長 山田和裕

注1)地域交流事業とは、観光による地方創生 / 地域活性化ビジネスのこと。

JTB 総研:山下真輝部長( 左)、藤田研究員(右)

Q1.

フリクレアのコンサルティング(プロセス見える化+プロセス評価)
を導入するに至った経緯と決め手になったポイントなどを教えてください。


山下

JTBが2006年に地域に正対するため分社化されて以来、「地域交流事業」注1)に取り組んできたのですが、中長期的な視点で地域や顧客に接する必要があるため、目先の数字を追い求める単年度評価ではなく、成果が出るまでの途中のプロセスにも目を向ける人事評価制度を求める声が寄せられるようになりました。
そこで、本を読んだりインターネットで情報を集めたりしているうちに、フリクレアの山田社長が書かれていた『さらばイエスマン人が生きるプロセス評価』という本に書店で出会い、“プロセス評価” という考え方があることを知ったのです。

  • 山下
  • プロセスマップ
    プロセスマップ

とりあえず一度専門家の話も聞いてみようと考えて、早速ホームページから問い合わせをしてみました。すると、すぐ連絡があり情報交換をすることになったのです。実際会って話を聞いてみて、正直なところ少し驚きました。製薬業界というまったく畑違いのエーザイさんのプロセスモデルが、地域交流事業の地域キーマンとの関係づくりの進め方と酷似していたからです。
フリクレアさんが作成された“プロセスマップ”という独自の資料に、そのことがわかりやすい図で描かれていたので、直感的にわかりました。業界や扱う商品は全く違っても、地域関係者を巻き込んでビジネスにつなげていく本質的なプロセスはほぼ同じなのだと知り、目から鱗が落ちる思いがしたことを憶えています。

  • 山下
山田

導入の決め手になったのはどういうポイントだったのでしょうか?

山下

実は最初は社外に外注するつもりはなく、あくまで自分達でやるための情報収集が目的でした。とはいっても、自分達だけでやることには限界も感じてはいました。
話をするうちに惹かれたのは、まず仕事の進め方を一つひとつのプロセスに「分解」して整理する手法です。これがフリクレアさんの他社にはない独自のノウハウなのだと感じました。さらに、旅行ビジネスに精通しているわけでもないのに、他業界との共通点を参考にしながら、本質を見抜き言語化する能力ですね。自分達だけだとどうしても固定概念にとらわれてしまい、うまく明文化することの難しさ――特に、暗黙知を形式知にする難しさ も感じていたので、フリクレアさんにお願いした方がよいのではないかという風に気持ちが動いていきました。

2013年に検討を開始した時の社内申請資料メモ
2013 年に検討を開始した時の社
内申請資料メモ

最初は予算も用意していなかったので申し訳なかったのですが、総予算枠の中で他の案件と調整するなど工夫してお願いしたところ、心よく対応してくれることになりました。そして、2014 年 11 月から、まずは地域交流事業に取り組む支店長の行動パターンを標準化・見える化するところから開始しました。

Q2.

導入から5 年目を経て、これまでのプロセス見える化やプロセス評価パイロット
導入を通して感じるフリクレアのコンサルティングの印象や感想はどうでしょうか?


山下

「 仕事のやり方を標準化する」、つまり、「プロセスに因数分化する」ことの大切さがわかりました。最初はそこまでは想定していなかったのですが、プロセスに分解する途中で、事業を進める上でのボトルネックも自然とわかってきました。見える化のメリットは、単にプロセスを整理するだけでなく、本質的な課題が浮き彫りになってくることなのだなと腑落ちする形で実感しました。
新規事業で結果を出すためのやり方の定型化にとどまらず、組織のあるべき姿や解決すべき課題までもが見えてきました。これはまさに経営そのものとも言えます!
プロセスを標準化したことで、事業推進の振り返りや政策の見直しがロジカルにできるようなったことも思わぬ副産物でした。

言い方をかえると、「営業プロセスの見える化」とは、組織で固まっていない問題点も同時に見えるようにすることなのだと気づきました。また、それまでは漠然としか意識していなかった、そもそもの言葉(ビジネス用語)の定義や、仕事をズレなく進めるための共通言語づくりにもつながるということも新鮮でした。

山田

成果物として、“見える化ツール”(プロセスシートと標準プロセスの手引きのこと)という資料を納品しましたが、その感想はいかがでしょうか?お役に立っていますか?

山下

成果物に関して言えば、フリクレアさんにまとめてもらった「見える化ツール」のおかげで、想像力が膨らみ、関連する課題や整備しなければならないことを深掘りすることができました。
それまでは、「案件ごとに進め方はバラバラだ」とか、「担当によってやり方も違う」という思い込みがあったので、各人のやり方を整理するのは難しそうだと感じていたのですが、本質的なプロセスに分解すれば「標準化」できるのだなと実感しました。

最初は地域交流事業における支店長の取るべき行動の見える化から始めましたが、その後JTB の主力事業である旅行と地域交流事業を両輪でどうやって推進すべきかという「支店経営の見える化」を、支店長のマネジメント視点だけでなく、より現場の実務的に近い管理を行う営業課長の視点からもまとめてもらいました。
さらに、地域は北海道に限定しましたが、当初の目的であった「支店長のプロセス評価」のパイロット導入を実施し、その有効性を確認することができました。その後当社内で大組織改革があったため、本格展開はペンディングとなっていますが、再チャレンジの機会をねらっています。
最近では見える化から派生して、地方自治体からの受託事業のプロジェクトマネジメントの効率化と人財育成研修のために、「JTB 版プロジェクトマネジメントの標準化」も手伝ってもらっています。

  • 見える化ツールやPM 研修テキスト
    見える化ツールやPM 研修テキスト

山田

プロジェクトマネジメントについては、人財育成用の研修テキストの作成と研修のサポートを行いましたが、その効果や実践的な活用についてはいかがでしょうか。

山下

2018 年からフリクレアさんにもサポートしてもらいながら、地域交流事業のプロジェクトマネジメント研修(以下“PM研修”)をスタートさせましたが、それまでは関係者も多く複雑に思えたプロジェクトごとの進め方が、見える化ツールで俯瞰できるようになったので理解が深まりました。
特に、関連資料として準備してもらったプロジェクトマネジメントツール(プロジェクトの設計図や概要説明図など)は研修の参加者にもとても好評でした。私自身も担当する様々な案件で実際に活用させてもらって重宝しています。
こういった管理資料も今までは各人が工夫しながらバラバラに作成していましたが、このようにわかりやすく標準化してもらえると、プロジェクトをはじめて経験する地域の担当者も大きなミスが減ると思います。
PM研修のアンケート結果も8 割以上が「大変参考になった」という回答でした。これは普段の研修と比べて非常に高い満足度なので、事務局としても自信を深めています。また、「若手の担当者だけでなく、支店長や営業課長にも学んで欲しい」とのコメントも寄せられているので、地域交流事業の中~上級者含めてJTB全体の関係者まで広げていくことも検討しようかと考えています。

Q3.

その他、今後の展開や要望などについてもお聞かせください。


山下

新規事業としてスタートして14 年目を迎える地域交流事業ですが、次の展開としては、自治体からの受託による調査・コンサルティング・プロモーション業務だけではなく、自らが観光地に新たな需要創造につながる観光サービスやコンテンツの開発を行う「自主事業開発」注2)の強化や、観光地の新しい魅力につながる観光施設や観光分野のソリューションにつながる事業への投資にチャレンジするという新たなステージに向かっています。JTB社内では第3の創業というテーマを掲げ、現在の主力である旅行に代わって、今後100年を支える新たな事業モデルの在り方を模索している過渡期なのです。

そのためにまず地域との関係構築の窓口として全国の支店に配置され、観光素材や投資先の目利きを務める「観光開発プロデューサー」の行動パターンの見える化が喫緊の課題です。

また、彼らの活動を支えるためにもプロセス評価の研究に改めて取り組む必要もあります。
さらにつけ加えると、地域交流事業担当者のことを、DMCプロデューサーと呼んでいますが、さらなるレベルアップにむけて人財育成研修体系の見直しと再構築も視野に入れていかなければならないと考えています。私もJTB総合研究所の立場から人財育成に貢献していきたいと考えています。

山下

こういった背景には、世の中で求められる旅行市場の形態が、従来の団体客をターゲットにした観光地への「送客モデル」だけではなく、個人客の多様化する旅のニーズに応える「集客モデル」に大きく変化していることがあります。
これからは単なるハコモノやマスメディアによる派手なPR だけでは、継続して地域に旅行者を呼び込むことはできません。地域にコンスタントに来てもらうためには、魅力ある観光素材の発見と磨き上げ、そして受入環境を持続的に整備することが求められます。
旅行・観光用語では、旅の目的地のことを「デスティネーション」注3)と呼びます。旅の目的地 / 受入地である地域を、単なる点在する観光スポットではなく、デスティネーションという概念でとらえ、ハード整備だけに頼るのではなく、コト体験・消費を中心とする魅力的なアクティビティなどの着地型旅行商品を開発しながら、地域での滞在時間の拡大と観光消費額の向上を目指し、地域全体をエコシステムとして活性化していくことが求められます。

しかしながら、この概念は従来型の送客モデルから抜けきれない旅行関係者にとってはパラダイムシフトであり、JTBのみならず他の旅行会社でもまだ理解されているとはいえません。従来の旅行ビジネスとは違う考え方による新たな取組みは、実態として3 歩進んで2 歩下がるという感じで、苦労しているのが正直なところです。
とはいえ、日本政府が観光を地方創生の柱と位置づけ後押しをしてくれていることもあり、時代の要請に合わせて理解者のネットワークが広がってきています。例えば、東北の震災の時に復興をお手伝いするための新たな素材を旅行商品化してもらうべく社内で相談した際に、収益性が見えない商品を企画することに対して、社内ではかなりの抵抗感がありましたが、消費者のニーズが多様化する中で、地域との連携による多様な旅行商品のニーズの必要性への理解が進み、今では彼らも積極的な推進派になって協力してくれていることは心強く感じています。

訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンド市場においても、従来型の旅行の発想の延長で、つい最近までは有名観光地・施設や中国などの爆買いといったモノに依存していました。しかし、継続的に旅行者が訪れたくなる観光まちづくりを行うためには、中長期的な地域社会づくりと国内外旅行者の来訪促進の好循環をつくることが大切であり、その結果として経済効果を伴った地方創生が実現できると考えています。
そのような持続可能な地域社会に貢献していくことが、「総合旅行業」から「交流創造事業」へ事業ドメインシフトを行い、従来の旅行会社からJTBが目指している「第3の創業」で実現する新たな企業の形ということにもつながると思います。

山田

当社のプロセスコンサルティングの本質をご理解いただき大変ありがたく思います。地域交流事業の3rd ステージで、プロセスの見える化とプロセス評価が少しでもお手伝いできるように、フリクレアも微力ながら引き続き協力させていただきます。本日はありがとうございました。

注2)自主事業開発とは、スポット的な旅行ビジネスではなく、地域とJTB を含む観光業者が一緒に協力しながら観光客に満足してもらうことにより、地域が継続的に潤う事業ビジネスモデルのこと。単なる手数料商売ではなく、JTB自身の投資や資金活用による独自のイベント、コンテンツ、施設運用などを含めた地域とのより深い信頼関係をベースとする事業。
注3)デスティネーションとは、旅行目的地、旅行先のこと。「デスティネーション・マーケティング」(旅行目的地を商品として捉え、最大の経済効果を上げるために消費者のニーズを満たそうとする誘客活動)や「デスティネーション・キャンペーン」(一定期間さまざまな手段を用いて旅行目的地の広告宣伝活動を行うこと)、「外国人が好むデスティネーション」などのように使われる。(JTB総研観光用語集)

(2019年10月11日)

その他の事例

事例紹介(7) 私の手柄ではありません

これは、旧財閥系の都市銀行の頭取にまで上りつめたUさんの支店長時代のエピソードです。

今から30 年ほど前、Uさんは東京都内にある支店の支店長を務めましたが、その際、「強制1日預金」という悪しき慣習を断ち切るために思い悩みました。

その頃、銀行の支店の成績評価は、預金残高が一つの指標となっていました。当時はどの銀行でも預金残高を水増しするために、取引先企業に無理やり頼んで月末最終日に預金をしてもらい、翌月1日にはまた返すという“強制的な協力取引” が当たり前のように行われていたのです。

しかし、たった1日だけ預金をしてもらっても本当の実績ではないのですから、銀行にとっては実質的には何のメリットもありません。皆もわかっているのですが、50億円とバカにならない金額であったため、やめるわけにもいかず惰性でマンネリ化していました。

そこでまず、Uさんは全支店の成績を管理している本店の業務部長に会ってこのことを相談しました。
「こういった数字づくりはやめるべきです。月末に一時的に増える預金残高で支店の業績を評価しても意味がないではありませんか」

と進言したのです。業務部長もこの現場の実態は知らず驚きましたが、「君の言うことも道理だが、これをやめると毎月数十億円も預金量が減ってしまうではないか……」

と苦渋の表情を見せるだけで、状況にメスをいれるつもりはありませんでした。

そこで、Uさんは一計を案じて、思い切った行動に出ました。ある日、本店で開かれた支店長会議に出席したUさんは、頭取をはじめとした銀行の幹部たちを前にして、「預金残高は、私の手柄ではありません!」

と発言したのです。驚いた顔をしている頭取や幹部たちに向かってUさんはその理由を説明しました。そして、「見せかけの数字だけ見てはいけません。数字をつくるプロセスに目を向けない経営を続ければ、必ずどこかでその報いがきます」

と訴えました。Uさんが話し終えると、しばらく沈黙の時が流れました。そして、頭取は皆に向かってこう言ったのです。
「勇気をもって正しい意見を言える君のような人物は、わが行の大切な財産だ」

もし、Uさんの進言が頭取に理解されなければ、その後の出世の望みは絶たれ、地方に飛ばされるところでした。Uさんはそれも覚悟の上で、銀行の将来のことを切に思い正義感から発言したのです。勇気をもって発言したUさんは称えられるべきですが、その正論をきちんと受け止める度量のある頭取がいてくれたのも幸いでした。

その後Uさんは、頭取のバックアップを得て、法人部門における意味のない預金取引を一切やめました。その代わりに、月末の数字づくりに費やしていた労力を本来注力すべき個人の預金獲得に振り向けることで、実質的な成績を向上させ、法人部門で減った預金量を穴埋めしたのです。

ちなみに、Uさんが行った「月末だけの強制預金をなくす動き」は、この銀行だけにとどまらず、その後他の銀行にも広がっていったということです。

人の手柄を黙って自分のものにしてしまう人が多い世の中ですが、Uさんのような姿勢をぜひ見習いたいものです。

(2010 年1 月8 日)

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事例紹介(6) プロセス評価で業務プロセスの大改革

「プロセス評価」を実際に行っている事例として、大手飲料メーカーA社のケースを紹介します。かつてA社は飲料市場において圧倒的なシェアを誇り、業界の王者として君臨していました。しかし、ライバルのB社が大ヒット商品を発売してから市場におけるシェアを奪われ、ついに長年にわたり守り続けた業界シェアNo.1の座を、B社に明け渡してしまいました。

一方、業界を取り巻く環境を見ても、少子化や消費者のし好の多様化による影響があり、もはや売上の将来的な伸びは期待できず、横ばいか微減という状況にありました。 このため、「ここで抜本的な改革を行わなければ、No.1への返り咲きはおろか、会社として危機に陥る」という強い危機感を持ったA社の経営陣は、2001年度から全社を挙げて業務プロセスの大改革に着手したのです。

改革において特に重要な部門は営業でした。営業部門における改革の目的の第1は「情報共有による営業力の底上げ」、第2は「経常利益の拡大を目指す路線に転換する」ということでした。

そこで、A社の経営陣がこの二つの目標を達成するために行ったのは、それまでの営業活動を見直して提案型営業を強化すること。そして、それまでの成果主義に基づく人事評価を見直して、“成果”と“活動プロセス”で評価する仕組みをつくることでした。 この業界における提案型営業というのは、自社商品の飲料だけでなく、他の食品も含めた売場づくりをスーパーなどの量販店に提案するというものです。 例えば、冬の時期のスーパーでは「今夜はあったかお鍋♨)」と書いたPОPを掲げ、必要な食材をすべて揃えたコーナーをつくります。その日の献立に悩む来店客がセットで買い物をしやすいようにすることで、できるだけたくさんの商品を買ってもらおうという提案をするわけです。

営業担当者は、「お酒をたくさん買ってくれたら値引きします」というような古い営業ではなく、顧客である量販店の売上向上に役立つ様々な提案を行うのです。それによって、量販店の売上に貢献し、自分たちの飲料も売れるという「Win-Win」の関係をつくるのです。 A社ではこの提案型営業を担当する営業部員に対して「プロセスマネジメント」と「プロセス評価」を導入することになりました。

この業界では自社シェアを伸ばすためには、4社しかいない競合のシェアを奪い取るしかありません。しかし、これは言葉で言うほど簡単なことではありません。競合も自分のシェアを守り少しでもアップさせるために必死なのです。少なくとも半年、場合によっては1年、長い時は3年もの時間をかけて、根気よく競合に取り込まれている顧客を自社側に鞍替えさせる必要があるのです。

こういった時間のかかる中長期的な仕事を成果だけで評価すると、社員は誰もやりたがりません。すぐに評価に結びつく短期的な売上を追い求めるしかないからです。 そこでA社では、会社がシェアを奪いたいターゲットをリスト化し、さらに、シェアを奪うための“標準プロセス”を明確にしました。そして、会社が決めたことを行っている場合は、まだ売上に至っていなくても途中のプロセスを評価することにより、競合のシェアを奪うための地道な営業活動を奨励するようにこれまでの評価のやり方を大きく変えたのです。

そのためにまず、提案型営業の“できる社員”の営業プロセスを元に標準プロセスを定めることから始まりました。A社には日本全国に1500名ほどの営業社員がいますが、その中から30人ほどの優秀な社員を選び、ヒアリングを行いました。そして、彼らの活動プロセスを分析してコンピテンシーモデルを構築。それを元に、営業プロセスの標準化を行ったのです。 これによって、提案営業で優秀な成績を収めていた人の活動パターンを、他の営業部員にも広めることができるようになりました。また、具体的な提案の成功例などの情報を共有できるITシステムも構築しました。

これによって、提案営業で優秀な成績を収めていた人の活動パターンを、他の営業部員にも広めることができるようになりました。また、具体的な提案の成功例などの情報を共有できるITシステムも構築しました。
一方、人事評価については、成果指標と活動プロセス指標の比率を同等に「50%:50%」に設定しました。営業部門においては成果の評価は当然必要なので50%評価しますが、何とプロセスも成果と同じ50%にしたのです。
A社のこうした業務プロセスの改革は着実に効果を上げています。業績は好調を維持し、特に経常利益の伸びが大きく、同社の改革の目標が達成されているのです。現在もB社と激しいシェア争いが続いていますが、財務体質は完全にB社を含めた競合他社を凌駕する強固なものとなっています。

(2009年10月9日)

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事例紹介(5) 1人の200%より5人の80%

成果主義の弊害として行き過ぎた個人主義が問題視された米国は、その解決のお手本として日本のチームワークを学びました。ところが、「近年の日本企業では、社員がみな個人主義に走り、社内のチームワークが失われている」と、ある精密機器会社の役員Мさんは憂いています。

Мさんの会社では成果主義を導入していますが、「成果主義のいきづまり」に直面しています。「個人の働きにスポットを当てすぎたことで社員が個人主義に陥り、社内に“自分さえよければいい”という風潮が生まれた」のだそうです。まさに米国と同じです。

課長クラスはプレイングマネージャと化してしまい、部下を育てることがないがしろにされている状況です。「このままでは、これまで日本企業の強みであったチームワークが失われ、やがては競争力も失われていく」と懸念しています。

Мさんが考える解決の糸口は、「チーム力の評価と教育の重要性」です。キーワードは『1人の200%より5人の80%』。つまり、1人のスーパーマンが200の仕事をこなすより、5人の社員が80の仕事ができるように教育することで、チームとして400の仕事をこなせるようにするという考え方です。

この教育のためには、まず土台をつくることから始めなければなりません。例えば、以前のように、「飲み会なども含め上司と部下の関係を構築しながら、顧客との接し方、意見の出し方、社内調整の仕方などを教えていくこと」や、「会社が教育を重要な業務の一つとして位置づけ、評価の対象ポイントとして奨励すること」がこれからの時代には必要だと言います。

管理者の教育も問題です。「今の課長はかつてのような権限がなくなりかわいそうだ。部長に言われた通りやっているだけのイエスマンだ。これでは管理者が育たない」と嘆きます。Мさんは大手電機メーカーの関連会社を何社も見てきましたが、「課長に実質的な権限がなく部下を育てられない会社は、すべて業績が悪い」と言い切ります。逆に良い会社は、管理者として学ぶべきことを会社の遺伝子/DNAとして伝えることを組織的にやっていたそうです。

管理者を含めた教育の重要性を認識し、成果主義によって失われつつある日本企業のチームワークという強みを取り戻すことが、これから迫りくる世界的な大不況下で生き残る鍵の一つであることは間違いなさそうです。

(2009年7月24日)

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事例紹介(4) プロセスの見える化で名誉挽回

ある大手電機メーカーの営業部で売上のために必要なプロセスを見えるようにした結果、主観でゆがんでいた評価が改善されたという例を紹介しましょう。

この会社の営業担当本部長は、「やるべきプロセスをちゃんと行っていれば、結果は自然とついてくるものだ」という持論を持っていました。そこで、売上とプロセスの相関関係を確かめてみることにしたのです。

①ヒアリング ②提案 ③デモ・プレゼン ④見積 ⑤クロージングの五つを営業の「有効プロセス」と定め、30名ほどの営業員が各プロセスに実際どれくらい時間を使っているのかという「有効時間」を測ってみました。その結果が図です。
  • 売上と友好営業時間の関係
これを見ると、売上金額が一番大きいQさんは有効時間が一番多く、売上が一番少ないSさんは有効時間も一番少ないのがわかります。分析によって、本部長の持論が正しかったことが証明されたわけです。

ところで、データだけを見るとQさんができる社員で、Sさんがダメ社員のように思えます。しかし、それまでの評判はこのイメージとは異なるものでした。

Qさんは確かに実績を上げていたのですが、上司や同僚たちは「たまたま、いい案件を担当しただけだ」「今回は運がよかったのだ」というようなやっかみの目で見て、彼の働きを素直に認めようとしていませんでした。

しかしこの分析によって、Qさんはやるべきプロセスを懸命に行っていたため、成果が出ていたということがわかり、名誉も挽回されました。

一方Sさんは、以前は大口顧客を担当して実績も上げていた本部長お気に入りの社員だったのです。ショックを受けた本部長が問い質したところ、実は家庭内に事情があり仕事に専念できない状況であったことが発覚しました。

このように、職場における人の評価は、誤った先入観や過去のイメージで見ることにより、ゆがんでしまうことが間々あります。一度貼られたレッテルを覆すことも容易ではありません。あるいは、「やるべきことをしっかりやっているが、アピールが下手」「正義感が強いので、この手の部下が嫌いな上司とは反りがあわない」などのタイプは通常の評価では損をしがちです。

プロセスを見えるようにし評価することで、口だけではなく本当に仕事をしているのは誰かがはっきりわかるようになります。

(2008年12月19日)

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事例紹介(3) 頭でわかっていても、実際やるのは難しい

これは、ある自動車ディーラーの話です。この会社のディーラー統括責任者が、業績が良い店舗と悪い店舗の行動パターンの違いを調べるために、首都圏30店舗で現場の社員が実際に業務に使った時間を測ってみました。結果が図です。

  • 業績の良い店と悪い店の行動の違い
わかりやすいように、その中で一番業績の良い店舗のデータを左に、一番業績の悪い店舗のデータを右に示しています。縦軸は、業績を伸ばすために本部から指導している「やるべき業務の優先度」、横軸は現場の「社員が実際に各業務に使った時間」です。

これを見ると、さすがに両店舗とも店に足を運んでくれたお客様への対応はきちんとしていているため、「来店対応」は同じように右上の一番上の位置にあります。

違いとしては、業績の良い店舗では来店してもらうために必要な新聞への広告チラシ配布などの「集客作業」や、来店してくれた見込み客に対する訪問や電話などの「フォロー」が右上にあり、やるべき業務をきちんと行っているのがわかります。その結果、自ら積極的に集客・開拓した「集客商談」も多くなっています。

しかし、業績の悪い店舗は、「集客作業」と「フォロー」が左上にあり、いずれも十分には時間が費やされていません。その反面、「勉強会」や「掃除」など、それほど力を入れなくてもいい業務の時間が比較的多くなっています。

全体的に見ると、業績の良い店舗は右方上がりの理想的な直線に沿って活動が分布しているのに対し、業績が悪い店舗では分散してしまっているのがわかります。

簡単に言うと、業績の悪い店舗では言われたことがきちんとできていないのです。しかし、やるべき業務の優先順位を口頭で尋ねると、業績の悪い店舗の社員でも、指導されている通りにやるべき順位で正しく答えることができます。ここで「頭ではわかっていても、実際できているかどうかは別である」という問題が浮き彫りにされます。

気をつけなければならないのは、データを示さずに成績が悪いことだけを追及してしまうことです。本人たちもそれなりにやったつもりにはなっているので、「やるべきことはやっています。疑うのはやめてください」というような感情論になりがちです。

しかし、図のようなデータを使えば、具体的にどの業務に問題があり、どう改善すればよいかが一目瞭然です。余計な感情論を排して、社員が自らの行動を継続的に改善していくことができるようになります。

(2008年12月5日)

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事例紹介(2) トップシェアを支える評価の秘密

不公平な前提条件で人事評価を行わないように、前提条件の難易度をきちんと見極めて公正な評価を行なっている空気圧制御機械のメーカーがあります。

この会社では、既存顧客からの売上に比べて、難易度の高い新規顧客開拓を高く評価するという評価尺度を明確にしています。売上の数字の大きさだけでなく、新規顧客をいかに創造しているかを奨励するため、結果だけでなく、その途中のプロセスも評価する仕組みになっているのです。

また、大手顧客を担当しているベテラン営業員も安住することがないよう、顧客との関係が安定した段階であえて他の担当者に変えてしまうそうです。引きついだ後任者は単に同じくらいの売上をあげても評価されず、どれだけその既存客からの売上を伸ばしたか、また、自身もどれくらい新規の顧客を開拓しているかで評価されるのです。

結果、この会社の製品の市場シェアはなんと60%。それほど有名な企業ではありませんが、「ニッチであり続けろ」という信念のもと、あえて広告やホームページも充実させず、意識的にそのマーケットの存在を知らしめないというのも本当のトップシェア企業だけができる心憎い戦略です。

(2008年11月21日)

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事例紹介(1) 評価のダブルスタンダード

大抵の会社には立派に整備された人事評価制度があります。しかし、そこに定められた評価ルールと実際の評価が関係ない、あるいは、別の評価ルールが存在するとしたらどうでしょうか。

ある大手の通信関連企業では、将来の幹部候補生になった社員は、成果には関係なく昇進していきます。規定では、2年以上A評価をとることが昇進の条件となっていても、関係ないのです。幹部候補生は成果とは関係なく順調に昇進していく一方で、他の一般社員は成果主義のルールに従い厳しく評価されます。

つまり、評価に「表のルール」と「裏のルール」という『ダブルスタンダード』が存在しているのです。このことはどこにも明文化されてはおらず、幹部候補生が誰かは一部の人間しか知らないはずなのですが、“上がる人”が誰かは周りの社員たちも皆わかっています。

この会社のやり方は、国家公務員のキャリアとノンキャリアに似ています。しかし、国家公務員試験では試験という明確な基準によって分けられますが、この会社の場合は不明確な評価のダブルスタンダードによって分けられてしまうのです。

一般社員は、どんなにがんばっても幹部に登用される望みはありません。成果や努力とは関係なく昇進する人が決まっているのであれば、一般社員のモチベーションが保てるはずがありません。「でも、そのことを言っても仕方がない」というあきらめ感が蔓延しています。上司もルール通りに真面目に評価をすると、自分が責められるかもしれないので、本気で評価できません。
評価においてはこれだけ差がありながら、幹部候補生と一般社員の実力の差はそれほどないというのも驚きです。さらに聞いてみると、このグループでは他の関連会社も同じようにダブルスタンダードで評価をしているというのです……。

せっかく立派な人事制度をつくっても、健全な競争原理を働かせないまま本気で運用しなければ、一般社員のやる気を削ぐだけで、力を本当に活用することはできません。
「先の人事が見えている」というのは、組織が崩壊するパターンの一つです。逆に伸びる会社では、努力して実績を上げた人間を登用するので組織が活性化されます。どんなに素晴らしい評価制度をつくっても、社員をダブルスタンダードで評価する文化が存在する限り、社員の持てる力を引き出すことは永久にありえません。

(2008年11月7日)

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