ハイパフォーマーは仕事に関係なさそうな相談事も受ける
信頼を獲得するには?
営業で顧客の信頼を獲得するにはどうすればよいのでしょうか?
自社商品を売り込むためのトーク力を上げる。相手にこう言われたらこう返す問答法を身につける・・・ 残念ながらいずれも間違いです。
答えは相手の相談相手になることです。相談を受けることは信頼獲得の近道です。仕事に直接関係なさそうなことでも相談を受けることです。
効率ばかりが求められる世の中ですが、遠回りに見えても、相談を受け解決に協力することが、信頼獲得の確実なルートなのです。
それまであまり興味なさそうで、けんもほろろだった相手の態度が変わる時があります。顧客が相談してくれるのは、 “潮目が変わる重要なタイミング”であることが多いです。チャンスです。顧客との信頼関係を一歩進めるために、決して見過ごしてはならないサインです。
ようやく自分が信頼され始め、試されているのだととらえてください。つっけんどんな態度に見えても、見ている客は何気なく営業の対応を見ているものです。
新規取引を開始する、競合から乗り換えてもらう、取引額を伸ばす、シェアを拡大する。こういった営業目的を達成するために、とても大切な一歩なのです。
宿題対応は抜かりなく
そのことを知っているハイパフォーマーは、訪問時にもちかけられた相談や宿題に対する準備に抜かりがありません。
B2Bビジネスでよくある相談は、(1)事例調査(うまくいっている成功事例や失敗した事例)、(2)競合情報(どういう動きをしているか、特に新しい試み)、(3)市場・価格調査(市場の将来予測、価格変動)などです。
こういった依頼に真摯に対応して役に立ちそうな情報を提供すると、信頼できるかどうかのテストをパスできます。質問も出やすくなるので、次の「宿題」も自然ともらえます。
「営業的な接点を多く持て」というのは昔から言われる営業の鉄則の一つですが、そのためにどうすればよいかという問いに対する正解が「相談・宿題対応」です。
相談の中に真のニーズが隠れている!
難易度は上がりますが、「こういうことができないかな?」はとてもおいしいキーワードです。提案している商品だけでは対応できないことへの相談ということですが、そこに真の顧客ニーズが隠れていたりします。
成功している新規事業の中には、こういった顧客からの相談対応にから始まったケースが多い、という話も聞きます。
一方で、「できない営業」は、こういった相談ごとに関する感度が低いです。断りはしなくても、めんどうくさそうにします。あるいは、その場では調子よく安請け合いしますが対応が遅いです。平気でそのまま放っておいてスルーします。
実は口だけで約束したことを守らない営業は最も嫌われます。見過ごされがちですが、これは営業の失敗要因です。逆説的にいうと、信頼を失いたかったら、口だけで適当なことを言って約束を守らない“口先営業”になることです。
仕事とは関係ない相談を受けたらチャンスと思え!
一見仕事にはつながりそうもないことでも、顧客から相談されたことには柔軟に対応することをおすすめします。仕事とは直接関係なさそうなことを頼まれるのは、期待されていることの証です。ビジネスチャンスを与えてくれているのです。
相手も人を見ています。この人ならやってくれるのではないかという人を試すために、ちょっとした変化球を投げているのかもしれません。
遠回りに見えるかもしれません。また、必ずしもすぐリターンが返ってくることばかりではありません。無駄な作業で終わることもあります。
しかし、継続的なビジネスは人間関係につきるので、回りまわってビジネスに帰ってくる可能性もあなたが考えている以上に高いのです。少なくとも、お手伝いしながら接点を増やし、関係構築に努めることができます。
無償の精神で対応してみたたら?
大手航空会社J社を担当していたITソリューション会社の営業Sさんの話です。中国ビジネス強化を目指していたその顧客から、「中国人インフルエンサーに講演を頼みたいのだが、何とかしてくれないか?」と頼まれたそうです。
自社の仕事とはまったく関係ありませんでしたが、つてがあったので快く中国進出セミナーの講演者紹介に協力しました。特に見返りを期待したわけではありません。純粋に無償の精神だけだったそうです。
しばらくして先方から連絡がありました。訪問したところ「以前提案してもらったITツールの件、担当部署に通しておいたから、具体的なことはそこと詰めて」と案件を紹介されました。
一度提案をしたことはありましたが、正直言ってそれほど芳しい反応があったわけではありません。ところが、話はトントンと進みパイロットプロジェクトを無事受注!実は講演者の紹介を依頼してきた人は、社内でヒット商品を発掘し続けていた影響力のあるキーマンだったことが、あとでわかりました。
営業は急がば回れ
取引先によっては、こういった“ビジネス的な配慮”をしてくれることもあります。特に余裕のある大手の場合は、中長期的な視点で考えているので珍しい話ではありません。
変に見返りを期待してはいけませんが、無償の相談対応を続けていると、思いがけず嬉しいお返しがあるのも事実です。これを心理学的には“返報性”と呼びます。
相談をきっかけに大きな成果が生まれた事例を紹介しました。営業では目先の利益や効率ばかり求めず、顧客に頼まれたことに対してできるかぎりのことを続けていると、いつか必ずよいご褒美があります。
効率ばかりが求められる世知辛い時代ですが、急がば回れでうまく行くこともあるのが奥深いところです。
【まとめ】
〇ハイパフォーマーは、直接仕事に関係なさそうなことであっても、チャンスだと考えて、相手の立場になってできるかぎり協力しようとする。
×できない営業は、直接自分の利益につながらないことには興味を示さない。余計な時間を使いたくないので、相手が聞いてくる意図をよく考えもせずスルーする。
(参考文献)
『営業の正解』相談対応⑭ 仕事に関係なさそうなことを相談されたら?
※「ハイパフォーマーの成功特性」は、これまでに出版した本の一部を改編・再編集したり、ページ数の制限でやむなくカットしたネタなどもあらためて紹介します。
ハイパフォーマーの成功特性シリーズのバックナンバー
↓
No.148: ハイパフォーマーのヒアリングの精度を上げる工夫
No.147: ハイパフォーマーはルールに縛られず柔軟に対応する
No.146: ハイパフォーマーは小さな約束を必ず守る
No.145: ハイパフォーマーの信頼獲得の秘訣
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2025年05月25日)