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コラム

プロセスは人を型にはめてしまうのか?

 

 プロセス見える化の本質をよく理解してない人が口にするよくある反応のひとつが、「プロセスは非人間的なもの。マニュアルのように人を型にはめてしまうのではないか」という懐疑的なものだ。

プロセスという言葉を聞くと、「決められたことを、何の工夫もなくそのままこなす」「人間の感情を無視してロボットのように働かせる」というような、近代化前の古い工場で働く人のネガティブなイメージに重ねる人もいまだにいる。

 

 しかし、そうではなく、むしろ逆なのだ。プロセスは人の行動をマニュアル化したり、型にはめるものではない。各人の成熟度や時代の変化に応じて、プロセスそのものも変化していく。プロセスは、ファーストフード店でアルバイトに仕事を覚えてもらうための型にはまったマニュアルではなく、常に改善の工夫を行いながら更に上のレベルをめざす「創造的なルーティン」とも言えるものなのだ。

 

 人の能力を高め創造性を発揮するために、プロセスを標準化し、学びやすいように見える化しなければならない。そうして整理した正しいプロセスを学び、共有しながら改善することで、成長しビジネスの基本を固めることができる。基礎ができてはじめて応用が利くようになり、創造力が発揮できるようになる。

 見える化で課題を明確にして無駄を省き、チームで仕事を分担して効率を高めることにより、本来集中すべき創造的な仕事にかけられる余裕を増やすことができる。

 

 プロセスという言葉は使っていないが、ドラッカーの言葉がある。「伝承を知識にまとめ、思考を体系にまとめることは、人間の能力を卑しめてマニュアルに置き換えることと誤解されがちである。・・・・(中略)・・・・・

 しかし、体系的な知識は、今日の医師に対し、100年前の最も有能な医師以上の力を与え、今日の優れた医師に、昨日の医学の天才が想像もできなかった能力を与える。

 いかなる体系も、人間の腕そのものを伸ばすことはできない。しかし、体系は、先人の力を借りて常人を助ける。常人に対し、成果を与える能力を与える。有能な人間に卓越性を与える。」(『創造する経営者』より)

 

 すなわち、プロセスとは「伝承を知識にまとめ、思考を体系にまとめること」であり、得られた体系的な知識はマニュアルではなく、卓越した成果を出すことを助ける先人から受け継がれた贈り物なのだ。

 

 プロセスの体系化 = 標準化・見える化は、「ビジネス成功のレシピづくり」にも例えられる。おいしい料理をつくるためのやり方レシピにまとめることは常識だが、同じようにビジネスでも組織内の貴重なノウハウをレシピのような形にまとめられれば、勝ちパターンを再現しやすくなり競合との大きな差別化にもなる。ちゃんとしたレシピがなくても、似たような料理をつくることはできるだろう。しかし、表面的な部分を真似することはできても、料理を本当においしくするための秘訣を会得することは容易ではない。

 

 「トヨタの工場を見学に行っても、同じことを再現するのが難しい」と言われるのはこういうことなのだ。本当に見習うべき仕事のコツ(標準プロセス)を、今日入った新人でもわかるように体系化したもの(見える化ツール)は、現場で正しい方向に人を導くための「羅針盤」となる。複雑なビジネスという荒海の中で変化に対応しながら、効果的に実績あげてもらうための「戦術の虎の巻」にも相当する。

 

(『プロジェクトマネージャーのためのプロセスデザイン入門』を参考に修正して一部活用)


(2019年03月25日)

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