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コラム

21世紀の人事評価③ やる気を上げる評価

(21世紀型評価は不透明な評価でやる気を失わせる)

 基準がはっきりしない不透明な人事評価は、人の心にしこりを残し、やる気を失わせます。いじけさせたり、心の病のもとにすらなります。社員のもつ創造性を活用することはとうていできません。さらに、不公平感や無気力感を職場に伝播させることにもなります。これでは、社員の創造性を発揮させるどころではありません。

 こういった感情は人の心に根づく緩慢な動きなので、上司への直接のクレームという形にはなりにくく、表面的には見えづらいのですが、社員同士の普段の会話を通して徐々に組織全体に伝播していきます。そして、時間を経て評価者と会社に対する信頼性を失わせ、活力を蝕んでいくやっかいな病巣になってしまうのです。必ずしも目先の業績に直接影響するわけではありませんが、業績が伸び悩んだり、落ち込んだりしていくのは時間の問題です。

 

【21世紀型評価は公正感のある評価でやる気を上げる】

 一方、社員の働きをよく見ている公正感の高い人事評価は、人のやる気を上げます。“さらに上のレベルを目指す”という人間本来の段階的な成長を促します。会社と評価者へのロイヤリティーやエンゲージメントも高めます。

 実績と強み、そしてチームワークに焦点をあてて評価を行い、会社の業績に貢献できる人を育てれば、短期的な数字には表れなくても、人という会社の大切な財産のレベル向上につながります。

 良い人事評価は、良い組織文化を醸成し、必ず中長期的な業績の改善、経営の安定という結果になって返ってくるものです。

 人がどのような心理的プロセスで動機づけられ、モチベーションが持続されるのかを理論的に説明する「ポーター=ローラーの期待理論」があります。

 人は報酬を得ることを目的に、目標を達成しようと努める。

 努力・能力・センスを合わせた結果として成果が出ると、与えられるべき報酬への期待が膨らむ。報酬には「内発的報酬」と「外発的報酬」の2種類がある。

 納得のいく評価が行われ、適正な報酬で報われれば、満足感を覚える≪報酬の公正感≫。

 実際際得られた報酬と満足度の差が、その後のモチベーションに影響してくる。

 報酬への期待が満たされることによって、さらに上の次元をめざしたいという気持ちが起こり、再びモチベーションが高まる。

 この心理的プロセスが循環的に続くことにより、モチベーションが維持され、人の成長とそのもたらす成果が相乗的に高まっていく。

 

 重要なのは「報酬の公正感」です。納得性の高い評価が機能しなければ、報酬に対する公正感は保てず、期待理論によるモチベーションの循環は成り立ちません。つまり期待理論は、報酬の公正感という観点から、人事評価の重要性を理論的に裏付けしているのです。

 

 21世紀型評価では、社員のやる気を上げ維持するために、公正感の高い評価で社員の納得性を高める必要があります。

 


(2010年10月15日)

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