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コラム

イエスマンの誕生

イエスマンの誕生

イエスマンの誕生

 

 会社の中で出世・昇進しようと思った場合に、一番賢い方法は何でしょうか?「一生懸命に働き結果を出す」。教科書的には正解ですが、現実の社会では別な残念な回答が存在します。それは「上司の言うことをよく聞くイエスマンになる」ことです。

 もっと正確に言うと、上司の言うことだけをよく聞き、仮にその判断や指示が間違っていると感じたとしても、決してそれを指摘することなく、お客様や社内の他部署のことも一切気にせず、言われた通りに愚直に従うことです。間違っても、自分が正しいと思うことを貫き通したり、上司の間違いを正そうとしたりしてはいけません。

 

 でも、上司はなぜイエスマンを評価してしまうのでしょうか?

 上司だって悪気があってイエスマンだけを集めているわけではありません。せっかく苦労してここまで上り詰めたのに、いつ誰に裏切られるかわからないという不安が強いのです。いや、人を利用し足をひっぱってここまで上ってきたので、いつ裏切られても仕方がないというのが本音かもしれません。

 それなりに優秀な人なので、自分の考えややり方は正しいと信じたいのです。

 部下に正論を面と向かって言われて、「君の言うとおりだ。私が間違っていた。おかげで目が覚めた。君の勇気のある行動への報いとして重要なポジションに抜擢するよ」などと言う上司は、テレビや雑誌の中だけでしか見たことがありません。現実の世界では、重要な仕事から外したり、左遷したり、降格させたり、という報復や見せしめの仕打ちは見たことありますが……。上司は「自分の言うことを素直に聞く部下しか信用できない」のです。

 上司が経営者の場合は、別な要素もあります。「経営者は孤独である」とよく言われますが、孤独に耐えられなくなった経営者が自分に負けてイエスマンを集めてしまうのです。経営者は、様々な最終判断を下さねばなりませんが、弱い経営者は自分の判断に異を唱える人間を自分のまわりから排除してしまうというわけです。

 

 以前新聞で、「日本はそもそも言うべきことを言わない文化である」という話を読んだことがあります。皆が変えなければならないとわかっていることがあっても、誰もなかなかものを言わない。ことが進行しどうしても手を打たなければまずいという局面に至ると、心ある人が意を決し正しいことを言う。しかし、他の人はその人を応援するかと思えば、この場に至ってもまだ何も言わず、結局はその勇気ある人を見殺しにしてしまう。それを見て、人はますますものを言わなくなる・・・という話です。「あなたの会社ではいかがでしょうか?」


(2016年02月03日)

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