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コラム

人の3つの理解法

 

人が新しいことを理解する時の3つのタイプ

 

 人の理解法には3つありタイプが分かれます。「見る人」・「聞く人」・「読む人」です。

「見る人」 ― 動画や図などで見た方が早い人

「聞く人」 ― 打合せや電話など、口頭で聞くのを好む人

「読む人」 ― 本や資料など文章を読むだけでわかる人。

 

 人に教えたり教育ツールを使う場合は、この3つのタイプを頭に入れておかないとよくわかってもらえずお互いフラストレーションをかかえることになります。場合によっては「理解できない迷路」に陥り、教える側は効率が悪くなり、教えられる側は無力感に囚われることになります。

人の3つの理解法

  タイプ別の課題

 

仕事で人に教える場合、タイプ別の課題や限界は次のように考えらえれています。

 

「見る人」 ― 動画がわかりやすいことは認識されていますが、動画を作成するには手間とコストがかかるので、現実的には動画教材が十分整備されている組織は多くはありません。

そもそも動画化すべきノウハウがだったり属人化したりしているので、そこをしっかり言語化しないと、学ぶ側が見る気になる動画はつくれません。

 

図はパワーポイント(以下“パワポ”)などでは一般化していますが、抽象的なイメージが中心です。また、あくまでもパワポは話す内容を補足するもので、説明する人のしゃべりとセットが前提です。

図の多いパワポはイメージは残るものの、説明内容が詳しくは書かれていないので、後で見直しても具体的なことは思い出せないものです。

 

「聞く人」 ― 打合せや電話は双方向のやり取りの中で多くの情報やニュアンスを伝えられるので、自分の言っていることを理解してもらっていると感じ満足度も高いです。

しかし、書いた物が残っているわけではないので、その場限りの話で終わってしまうことも多いです。情報量は多いですが、しっかりとメモや議事録を取って確認しないと、覚えていられる量も限られ、時間が経てばほとんど忘れてしまう点も課題です(忘却曲線の話)。

 

しゃべっている言葉は同じでも立場が違うと、理解するために必要な経験やリテラシー、課題感が違うので、同じ話を聞いても人によってその解釈が異なってくるというのも問題です。

あるいは、その場ではわかった気になりますが、「良い話を聞いた」という印象は残るものの、強制されないかぎりその場かぎりで実行されず、いつの間にかフェードアウトという漠然とした終わり方も多いものです。

 

「読む人」 ― 書類に目を通すことが多く、本もよく読むタイプが多いのですが、文章を読むだけでわかる人の割合は多くはないというのが課題です。全員が読めばわかるようにするのは、最後はIQの話に行きつくので現実的ではありません。

特に最近は若い人だけでなく、中年層も活字離れの傾向が強まってきています。文字だらけの資料やマニュアルは敬遠され、せっかく努力してつくっても引き出しの肥やし(PCフォルダの奥底の休眠データ)になりやすく、読書を推奨する人にとっては悪い方向に向かっています。

 

とはいえ、受験勉強では本を読んでいるわけですし、SNSなどの興味のあるテーマで短い文章や動画であれば読むことは抵抗がないようなので、見る人や聞く人にも読んでもらえるような工夫が求められます。 

 

動画はわかりやすいがそれだけでは足りない

 

お金と時間があるのであれば、見て聞いて学べる動画が一番教育効果が高そうだということになります。テレビやYouTubeは見る・聞くが一緒になっているのでわかりやすいですよね。

ただ、動画などの映像は、「見る人」だけでなく万人向けですが注意点もあります。学んだ内容の再現性が低いという点です。

見た時はわかったような気になりますが、あとで実際にやってみようとすると意外と覚えていない。具体的にどうすればよいか思い出せない。本当に理解しているわけではないので、再現する面では弱い = マネしにくいということです。

 

動画の場合、テロップや字幕なども入っていますが、文章量は少ないので、あまり頭に残らずうろ覚えなのです。また、学習の段階としては、あくまで受身で情報を受取っているだけです。

「インプット = 知識や情報の学習」はできているのですが、「アウトプット = 自分の言葉で発信したり実際の仕事に活かすこと」まではできていないからです。

 

テキスト化が課題解決の糸口になる

 

ここでいったん整理すると、見たり聞いたりするだけでは「わかった気にはなる」ものの、自分のものにできていないので、十分な育成効果は期待できないのが課題だということになります。 

解決策としては、重要な内容・ポイント・ノウハウを文章でも言語化して再現しやすいように、できるだけ具体的に見える化することです

 

動画であれば解説する音声も入っているはずですが、その内容をインプットしやすいように、しゃべっている内容やポイントをテキスト化して文章でまとめた資料がセットであると、あとで何度も読み直すことができるのでさらに効果が高まります。

 

1回見たり聞いたりしただけですべての情報を覚えられるのであればよいかもしれませんが、それができるのはほんの一握りの記憶の天才だけです。普通の人は何度か同じフレーズを繰り返し見直す必要があります。

特定のポイントを画面や音声だけでなく、ゆっくりと自分のペースで確認したり、重要な箇所を振り返すことで学習効果が高まります。 

「見る人」だけでなく、「聞く人」や「読む人」にとっても、記憶の定着を促し、再現性が高まる = マネしすくなるので効果的です。

 

新しい試みを阻む理解の壁

 

 少し話の方向を変えて、3つの理解法の違いを頭に入れた上で、「理解の壁」をできるだけ取り除き、組織課題解決するにはどうすればよいか考えてみます

 

組織で新しい試みを試そうとするとなかなかうまくいかないものです。新しいシステムや考え方を導入する時など、目指す方向性はよく特に大きな抵抗もないのに本質をよく理解してもらえず、どうもうまくいかないという経験をお持ちの方も少なくないはずです。

 

「新しいことに取り組むのが面倒くさい」 「意図がうまく伝わらない」「伝えるべき中間層がうまく説明できない」「実行する現場の課題の理解やリテラシーが足りない」等々、それらしい理由が心に浮かびますがすべて表面的な話にすぎません。その裏にある「理解の壁」にも目を向ける必要があります。

 

理解の差が組織階層の中で生じやすい

 

組織に新しいやり方を取り入れたり変革を行おうとする場合、「理解の壁」があるために、パレートの法則(2:6:2の法則)における上位2割、さらにその中の本当のトップ層2~3%と、それ以外の層のレベルの差が広がってしまい、このことが結果的に組織内での浸透を妨げということが起こります。

 

組織のイノベーターである経営やトップリーダーなどの層は、視点が高く俯瞰的・経営的な視点から物事を見ようとします。

情報・経験・深く思考する機会が多いため、相乗効果で本質理解がさらに高まり、求めるレベルも高くなります。

課題意識の高いので、その解決のヒントを探すために、本もよく読むという傾向があります。

 

一方、その他の層は普段の業務に忙殺され、与えられたミッションや目標を達成することに必死なので、視野が狭くなりあまり目線が上がりません。時間がないので、スマホのタダ情報は見ますが、本を読む機会は限定的です。

新しいことをやらない理由を並べ立てる前に、本質を理解した上でどうすればできるかという前向きな方向で取り組んでもらいたいところですが、本質を理解した上で自分ゴトとして取り組めるのは、上位2割と将来の上位2割の予備軍である中間6割の一部に限られるというのが組織論における現実です。

 

仕事の理解の仕方は人によって違う

 

ドラッカーは仕事の理解の仕方は人によって違い、「読む人」「聞く人」がいると言います(『経営者の条件』P.F.ドラッカー)。この2つに加えて人に新しいことを伝える場合、現代では「見る人」を加える必要があります。それがこのコラムで解説した「人の3つの理解法」です。

 

上位のできる人たちは「読んだり聞いたりするだけでわかる人」ですが、その他の人には、本人の得手不得手を見きわめながら、わかりやすい説明のやり方を考えたり、サポートツールを用意する必要があります。

タイプ別の教育ツールの限界は前述した通りであり、3つのタイプを理解し、その課題を補いつつ、理解と記憶の定着率を高める工夫が求められます。

 

理解と記憶の定着率を高める工夫

 

例えば、予算が許すのであれば、PCやスマホで簡単に見ることのできる3~5分程度のショート動画や、マンガ冊子などはハードルが低く、若い人でも見聞きできます。

最近であれば、AIに社内ドキュメントを読み込ませて、自社の仕事内容に合わせたナレッジベースを構築することも可能になっています。

 

しかし、これらもしょせんツールの話です。よいコンテンツをつくるためには、大本の学習すべき内容が体系化され整備されていることが大前提となります

社内に点在しているマニュアルなどの社内ドキュメントをAIで共有しやすくする。ハイパフォーマーの属人的な知識を整理して見える化する、といったこれまでその必要性は認識されながらも、ツールの限界のために実現できていなかった「ナレッジマネジメント」の本格的な構築と展開が成功のカギとなります。

 

「3つの理解法の違いにより年齢を問わず理解の壁というものが存在しているのが当たりまえ」という前提に立ち、幅広いレベル感に合わせ<見る X 聞く X 読む>の要素を兼ね備えた教育ツールを整備することが、本格的な組織変革・人財育成を目指すためには必須になります。

 

今回はまず人に教えるという視点を中心に、人の基本的な3つの理解法の違いについてまとめてみました。次回は基本的な見る・聞く・読むに加えて、アウトプットを行うことで、記憶の定着率を高める「エドガー・デールの法則」(ラーニングピラミッド)の話を紹介しながら深掘りします。

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

「社員の理解を高めるために属人的なノウハウを言語化したい」「AIを活用したナレッジマネジメントに取り組みたい」などの課題意識をお持ちの方は こちらからご連絡ください。

 

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()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2025年06月25日)

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