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コラム

SFA/CRMが活用されない9つの失敗パターン

新型コロナウィルス感染の収束はまったく見えずまだまだ不安な状況が続きますが、コロナによる劇的な変化に対応するために、テレワーク時の仕事の見える化や、本気で営業変革を目指す動きが進んでいます。

 

DXを掛け声としたSFA/CRMの見直しを検討しているところも多いようですが、これまでの失敗経験を糧にして、「システム導入前のプロセス設計」の大切さや本質に気づき、システムを変える前にプロセスの標準化や見える化を先にしっかりやろうという会社も出てきているのは、本当に喜ばしいかぎりです。

 

そう、SFA/CRMは営業活動を支えるためのツールでありしょせんハードです。肝心なのはその上にのるソフトなのです。まさにそのソフトの部分を棚卸し~標準化しないまま、システム設定を目的とした〝簡易プロセス分析もどき〟だけやって満足してしまう勘違いパターンが、これまでのSFA/CRMの成功を阻み、現場に歓迎されない残念なシステムを生み出してきました。

 

責任者が自分の非を認めたがらないのであまり表には出てきませんが、これまでSFAなどの営業支援ツールを入れたものの十分活用されておらず、いわゆる失敗に終わってしまっているケースも実態としては多いのです。

しかし、コロナ前に比べてテレワークがかなり一般的になってきた今、SFA/CRMを含めたICTツールを活用しないという選択肢はもはやなくなってしまいました。結果を効率的に出すために、仕事のプロセスを標準化して見えるようにする。そして、そのプロセスを実践し徹底することを支えるのがSFA/CRMなどの営業支援ツールです。  

 

 システムの各ベンダーは成功事例を数多く紹介してくれていますが、きれいにまとめられてはいるものの再現性が難しく、自分ゴトにしにくいのは否めません。そこでちょっと変則的ですが、SFA/CRMを導入する時に気をつけてもらいたい 「9つの失敗パターン」をまとめてご紹介することにします。以下、一つずつ簡単に説明していきますね。

(図1)SFA/CRMが活用されない9つの失敗パターン/①~④

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①経営層やマネジャーが使わない

まず、1番目の「経営層やマネジャーが使わない」から始めましょう。文字通りの話ですが、上の方がSFA/CRMを導入・活用することにあまり関心がなく、システムを使わなければ、下も当然使わなくなります。上が真面目に使わないということは、本気でないという証拠なので、下も使うモチベーションが上がらないのです。

例えば、システム真面目に入力していても、上司からの「あの案件どうなった?」と聞かれます。使っていない/見ていないことがばれる瞬間です。部下は「システムに入力してあるので、そちらを見てください」とは面と向かっては言いにくいので、仕方なく口頭で同じことを報告します。これを繰り返すと、そのうち「システムに入れても見てもらえなら意味がないや・・・」ということになります。

営業システムの場合、経理や精算システムなどとは違って、入力が必ずしも必須ではないので、入力率はだいたい6割からスタートします。そして、放っておけば、だんだん入力率が下がり、使われなくなるのは時間の問題です。

 

SFA/CRMの目的が浸透していない

次に、「目的が浸透していない」。何のためにシステム導入したのかという本質や目的が、現場に浸透していないパターンです。そのため、本来意図していたのと違う使い方をされてしまうことは、結構よくあります。

例えば、現場の嫌がる行動管理や、結果の数字の集計ツールといったところです。理由は、先にシステム導入ありきで目的をあまり深く考えていない、そもそも営業戦略がないのでツールを入れてもどう活用してよいかわからないなど、初歩的な問題がほとんどです。

 

もうひとつ〝人事評価のアンマッチ〟という裏の失敗パターンもつけ加えておきましょう。これは、システム導入の目的と人事評価の内容が合っていないというものです。

例えば、結果を出すためのプロセスを大切にするやり方を導入しようとして、経営者や営業リーダーがいくら「プロセスが大切に」と唱えても、人事評価が従来通り〝結果の数字〟しか見ていない場合、営業にとっては面倒くさいことが増えるだけで、何のメリットもありません。

メリットがなければ、真面目に取り組もうとする社員が少ないのは当然です。そのため、本来の意図が理解されずに、「また、上が変なことを言い出したよ・・・、忙しいから適当にやっておこう」くらいにしかとってもらえず、失敗につながるケースも出てきてしまうのです。

 

③プロセス設計が不十分

そして、3番目に「プロセス設計が不十分」がきます。フリクレアがこだわっている「プロセス標準化・見える化」のお話です。

プロセス設計がシステム設定を目的とした、言葉は悪いですが、しょぼいものだと、営業は入力する意義を感じません。また、現場の意見を取り込まずに、システムの仕様に無理に合わせようとすると、現場との摩擦が生じて、着実に失敗に向かっていきます。

例えば、SFA/CRM導入を企画した管理部門の考えだけで進めてしまう場合などに、プロセスの内容について現場の意見を十分取り込んでいない、理想形を目指し過ぎてしまい現実の営業レベルや実態に合っていない、などのパターンにおちいりやすいのです。

 

④入力項目が多すぎる

4番目は、「入力項目が多すぎる」という問題です。管理する側からすると、あれもこれもデータと多くの入力項目を設定したくなります。③のプロセス設計をしっかりやっておかないと、結果に至るプロセスやKPIが整理されていないので、項目が絞り切れないのです。自信がないと項目を絞ることができず不安だという心理が根底にあります。

特に、使い方に慣れない段階(導入初期段階)から、あれもこれもと欲張って多くの入力項目を無理に入れさせようとすると逆効果になります。入力する側からすると、項目が多ければ多いほど面倒くさくなるのは当然です。

営業を効率化するのではなく、入力の手間が増えるだけなので、これも不満がどんどん蓄積していきます。説明が不十分だと、何のためにその項目を入力するのかわからなくなり、当初の目的からずれてしまいやすくなります。また、集中すべきことや課題解決の焦点もぼけてしまうのです。

 

 

(図2)SFA/CRMが活用されない9つの失敗パターン/⑤~⑨

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⑤多重入力による負荷増

5番目は「多重入力による負荷」の問題です。同じデータの入力を、忙しい営業に何度もさせると、失敗しやすいということです。システムが一つに集約されておらず、別な関連システムが存在したまま放置されていると、同じ情報をシステムごとに入力しなければなりません。

だったらさっさとシステムをひとつにまとめればよさそうなものですが、そう簡単にはいきません。システムの技術的な連携が難しい、あるいは、費用がかかる、そういったところがネックになります。

例えば、予算管理を別システムで行っている、顧客情報の様式がシステムごとに異なっていて一元化が必要(名寄せの問題)、部門ごとに異なるスケジューラーが併存しているなどです。報告フォームを使わせているツワモノのマネジャーがいるという論外の話もよく聞きます。

特に、会社名や住所などの基本的な顧客情報ですが、営業員にこういった基本情報を3つ以上のシステムへ入力させようとすると、現場の入力負荷が増し、システムに対する不満として噴出するので必ず失敗します。

 

⑥継続的な見直しを行わない

6番目は「継続的な見直しを行わない」。導入当初はうまく稼働したが、その後プロセスや設定画面の見直しを1年以上行わないというパターンです。設定等の見直しは現場の要望を取り入れながら継続的に行わないと、新鮮味も薄れ失敗につながります。

システムは導入して終わりではありません。しかし、導入は大変なので、プロジェクトが終わるとホッとして「やれやれ、やっと終わったよ。あとは現場でヨロシク!」というパターンになりがちです。

しかし、現場の意見を取り入れながら、使い勝手を良くしたり、プロセスを見直したり、常に進化・カイゼンさせていかないと、ほんのちょっとしたことでシステムは使われなくなります。現場要望とシステムの不整合を修正しないと、現場は不満を感じ活用度が低下してしまうのです。営業は使わない理由を見つけるのは・・・、とても上手です。

 

⑦蓄積されたデータを活用しない

7番目は「蓄積されたデータを活用しない」。入力した貴重なデータの活用や分析が充分にできていない、せっかく忙しい中をぬって入力しても分析データを見たこともない、というパターンです。

本当は営業会議での営業強化策の検討や、戦略を考えるための根拠として使いたいのですが、せっかく忙しい営業に入力してもらった、貴重なデータを活用しないのはもったいないです。〝できる営業とできない営業の比較〟や〝有効営業時間〟のように、営業プロセスの見える化や、行動パターン分析にぜひ役立ててもらいたいものです。

 

⑧旗振り役の異動

8番目の「旗振り役の異動」。現実的には意外と多いのがこのパターンです。順位はもっと上でもよいかもしれません。プロジェクトを強力に推進していた旗振り役が異動したのに、時間がなく後任への引継ぎが十分行われていないという話は珍しくありません。

そもそも、組織の中で変革のできるリーダーはそう多くはいません。それなのに、〝前任者否定主義〟という人間くさいやっかいな問題も組織には存在します。簡単にいうと嫉妬みたいなものですが、前任者がライバル、嫌いだからという理由で、それまでやってきた試みを否定して、せっかくみんなで苦労して入れたシステムをダメにしてしまう、そんなケースを結構見てきました。

 

⑨管理部門主導で導入を行う

最後は「管理部門主導で導入を行う」というパターンです。つまり、営業現場の実態を知らない情報システムなどの非営業部門/管理部門主導で、SFA/CRMの導入、項目設定、運用管理を行ってしまうことです。

特にセキュリティ面、あるいはかつて流行った内部統制など、営業強化や効率の改善、あるいは、プロセスの見える化・改善といった本質的な目的より、管理部門の内向きの自己防衛的な目的や都合を優先してしまうと、現場にとっては使いにくいシステムになってしまいます。

売上や利益にはつながらない入力項目が増えると、営業にとっては何のメリットもなく余計な仕事が増えるだけです。繰り返しになりますが、セキュリティ、不祥事対応など内向き・管理的な目的でシステムを導入すると、失敗に向かって一直線です。システムを使う主体はあくまで現場のユーザーであり、彼らにかかる負荷をできるだけ少なくし、メリットを与えるものでなければ使われなくなるのは時間の問題です。

 

以上、今月はSFA/CRMがうまくいかない9つの失敗パターンをご紹介しました。教科書にはあまり書いてありませんが、よく陥りがちなパターンなので、導入にあたってはくれぐれもご注意ください。

 

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

次回はSFA/CRMをうまく活用して営業の実態を見える化していくかについて、分析のサンプルなども示しながら説明できれば、と考えています。

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(2020年08月25日)

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