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コラム

7つの営業スタイル ― 営業の正解を解くカギ

 

業種・業界を超えた成功特性 = 営業の正解を解きほぐすカギがあります。それは「営業スタイル」です。

同じ営業スタイルであれば、売る商品やサービスは違っても、本質的な意味で共通点を見出しやすくなります。営業スタイルというフィルターを通すと、別の業種や業界であっても、自分の仕事との共通点に気づきやすくなるのです。

 

7つのスタイルに分けてはいますが、今やその垣根はあいまいです。でもだからこそ、「できる営業」の共通性が見つけやすくなります。

業界外の成功特性が自分の仕事でも応用できるように、まず、自社の営業が基本的にどのスタイルの組み合わせなのか、改めて確認してみてください。そして、他の業種・業界のやり方を参考にするための基本的なリテラシーとして意識してみてください。

 

営業のスタイルというと、「直接販売(直販)」と「間接販売(代理店販売)」がまず頭に浮かぶかもしれません。しかしこれだけでは、業種・業界に共通する成功特性について語るにはシンプルすぎて足りません。

 

成功特性が共通することをわかりやすくするために分類すると、営業は次の7つの営業スタイルに分けられます。

「課題解決型」 「エリア型」 「共同開発型」「カタログ型」 「関係維持型」 「代理店型」 「ルート型」

 

7つの営業スタイルを、新規開拓・既存対応の軸も加えて図にしてみましたので、読み進める前に、ご自分の営業がどのスタイルなのかチェックしてみてください。

 

【図】7つの営業スタイルと新規・既存軸

7つの営業スタイル ― 営業の正解を解くカギ

 

注)営業スタイルの分け方や呼び方は他にもあると思います。みなさんが普段使っている言葉と必ずしも同じではありません。このコラムでの目的は分類の正しさや表現にこだわることではなく、あくまでも業種・業界に共通する成功特性を見つけやすくするための分類です。その点はご理解の上、このあとの内容を読み進めてください

 

それでは、それぞれの営業スタイルについて解説します。

 

「課題解決型」 

 

(概要)

 顧客のニーズや課題を解決するための提案営業を行います。商品先にありきではなく、顧客の課題解決のために要望をヒアリングし、マッチする商品やサービスを提案します。

 別な呼び方としては、「提案営業」「コンサルティング営業」「ソリューション営業」などがあります。

 取引形態としてはB2Bが主で、B2Cに比べると価格も高めになる傾向があります。

 

(特徴・傾向・課題)

今はほぼすべてのB2B企業が課題解決型のスタイルを求められています。もはや単純なプロダクトアウトの発想ではモノは売れないので、程度の差はあってもほとんどの会社が、この「課題解決型の提案営業」にシフトしてきているのです。

 

「コンサルティング」に近いやり方とも言えます。10年以上前から「ソリューション営業」という言葉は一般的になっていますが、言葉だけ変えても従来の物売り的な発想から抜け出せず、いまだに本当の課題解決提案ができていないところも少なくありません。

頭ではわかっていても、実践しようとすると一番難しい営業スタイルです。代表的な例としてはIT・情報サービスなどがあり、比較的先行していると言われます。

 

 

 「エリア型」 

 

(概要)

営業ごとに担当地区やテリトリー、ターゲット企業が決まっていて、その範囲で顧客に対応し、必要に応じて提案も行うスタイルです。

取引形態は、主に直販のB2BB2C。例としては、医薬、旅行、商社・卸売りなどが挙げられます。

 

(特徴・傾向・課題)

顧客数の多い首都圏ではあまり意識しないかもしれませんが、地域では、人間関係の輪 = ネットワーク活用が重要になってくる場合があります。そのため、あまり一般的ではありませんが、「ネットワーク活用型」とも言い換えられます。

 

顧客同士は実は地域のコミュニティで横のつながりがある場合も多く、営業の知らないところで情報交換を行っています。良い噂も悪い噂も広がりやすいということです。

ということは、ある取引先でいったん信頼を構築できれば、紹介で顧客の輪(ネットワーク)が広がっていきます。が、逆の場合は大変です。「できる営業」と「できない営業」の差が広がりやすいスタイルです。

 

この後説明する「カタログ型」でも、紹介が見込み客開拓の大きなウェイトを占める場合は、このネットワーク活用型で説明できる場合もあります。

 

 

 「共同開発型」

 

(概要)

部品・素材メーカーなどが、完成品を提供する製造販売会社と一緒に、共同開発を行うスタイルです。プロトタイプを作り試行錯誤しながら、最終ユーザに受け入れられる商品の製造をめざします。

別な呼び方としては、「共創型」や「コラボレーション型」などもあります。最近デザイン思考という言い方もちょくちょく耳にしますが、簡単にいうと、プロトタイプを今風にカッコよく言い換えたものです。

取引形態は、主に直販のB2B。商品は部品・素材だけでなく多岐にわたりますが、象徴的なのはスマートフォンやPCなどでしょうか。

 

(特徴・傾向・課題)

時々のニーズだけでなく、環境・規制などにも配慮しながら、「こんなことできないかな?」という顧客の要望やテーマ、宿題など対して、いかに柔軟に迅速に協力できるかがポイントになります。

専門メーカーとして蓄積している実績・データ・ノウハウ(技術力+コンサルティング力)・柔軟な対応力がものをいいます。

 

 

「カタログ型」 

 

(概要)

B2Bの課題解決型に比べて、商品そのものは世間一般で認知されており、モノによってはブランド化されているため、商品そのものの必要性を説明はあまり求められないスタイルです。

「パンフレット営業」とも言い換えられます。人間力が問われる「個人向け提案営業」や「個別商品営業」という言い方もできます。

顧客層としては、主に個人が多い直販のB2C。例としては、保険、車、住宅などがわかりやすいのではないでしょうか。

 

(特徴・傾向・課題)

 法人向けもありますが、購入者が個人であることが多いため、人柄、マナー、立ち振る舞い、話し方のテクニックなど、よくある属人的な要素が強調されやすいスタイルです。

 ところが俗説的なイメージとは異なり、このスタイルでも「できる営業」は顧客のニーズや課題に応える「課題解決型」や「コンサルティング型」のアプローチを行っている場合も多いようです。

また、先に説明した「エリア型」(ネットワーク活用型)で見込み客を増やしているなどの特徴もあります。

 

 

 「関係維持型」

 

(概要)

受注金額や規模が大きく、工期も長期にわたる重厚長大系の大規模案件の営業が典型例です。

別称「プロジェクト型」や「接待営業」。実態は接待営業というケースもまだまだ少なくありません。

取引形態は、比較的規模が大きめの会社と、そこへ商品やサービスを納入するパートナー会社との直販B2B

例としては、超高額な建築会社の大型ビル、重工業メーカーが製作するインフラ、プラント、産業機械など。大手商社などもこのスケールとタイムスパンで仕事をしています。

 

(特徴・傾向・課題)

取引先の数も比較的少なく、新規参入も限られていて継続商売も多い傾向があります。商談期間も単年度に留まらず、2~3年、場合によってはそれ以上かかることもあります。

 

また、営業一人だけではなく、技術者を含め組織で動くケースが多く、協力パートナーを取りまとめるプロジェクトマネジメント的な要素も求められます。

大手通信、家電グループ、建築・土木などでは、ピラミッド型の下請分業型というビジネス構造の特徴もあります。

 

従来型の飲みニケーションやゴルフのおつきあいによる人間関係維持で営業が行われている要素もいまだに強い分野のひとつです。そういう意味で、先に述べたように「接待営業」と呼ばれます。

 

業界によっては、いまだに本当の営業をしなくても受注には困らないという、うらやましいところもありますが、時代は変わってきています。以前とは事情が異なり、グループ外の新規取引拡大も求められる傾向が顕著です。

例えば、建築のサブコン以下では、ゼネコンからの待ちの営業ではなく、将来の生き残りをかけて「コンサルティング型」への進化を目指す課題意識を持つところもあります。

 

 

以上が大きな括りでいうと「直接販売(直販)」です。ここからは「間接販売(間販)」である代理店型とルート型を説明します。

 

 「代理店型」

 

(概要)

「カタログ型」と扱う商品が重なる部分もありますが、直販か代理店経由の間接販売かという点が異なります。単一商品ではなく、複数の会社の複数商品を扱う点なども異なります。(もちろん、専門代理店や単品の代理店もあります)

間販なのでエンドユーザによりますが、BBBBBC両方あります。

具体的には、コピー機(複合機)、保険等。その他、数多くの商品が代理店経由で販売されています。

 

(特徴・傾向・課題)

代理店を通して販売を行えるため、委託する側からすると自社で営業員を多く抱えることなく、多くの見込み客にアプローチすることが可能になるというメリットがあります。代理店網を活用することにより、全国展開を図るなど、カバーする営業エリアを広げることもできます。

 

そのためには、代理店の教育制度を構築する必要があります。販売数により代理店をランク分けし、ランクに応じてリベートなどの比率を変えたり、営業支援を差別化するなどの、代理店マネジメントも求められます。

商品によっては、販売後のサポートやメンテナンスが必要な場合もあります。

 

課題は直販に比べて、自社で直接エンドユーザに接する機会が少ないこと。そのため、見込み客が見えにくくなります。

また、代理店によっては競合の製品も取り扱っているので、リベートなどをけちると取り扱い優先順位が下がる、というデメリットも心配されます。

 

そこで最近の解決方向としては、「代理店との組織的な関係強化」がキーワードとして浮上してきています。「前年度比〇%アップ」というような数字目標だけを追い求める細かい話をしていても、お互いの事情があり疲弊してしまうので、代理店ランクによりおつきあいする戦略を組織的に変えるという話です。

 

 

 「ルート型」

 

(概要)

得意先を定期的に巡回して、継続的に販売するスタイル。在庫確認、追加受注、納品、新製品の説明などが主な業務です。売り場の棚や面を確保するための、提案や販促協力も行います。

業界によっては、「ラウンダー型」や「店舗巡回型」とも呼ばれます。

取引形態としては、BBBBBC。具体例は、食品、飲料、雑貨など対象範囲は多岐にわたります。

 

(特徴・傾向・課題)

たとえば、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売店に商品を納入し、それが売り場のよい場所にちゃんと陳列してもらっているかの確認、商品補充、競合情報収集などを行うスタイルです。

できるだけよい売り場の確保と社製品の店舗内シェアをいかに高めるかがポイントになります。

 

関連して「スーパーバイザー(SV)型」と呼ばれる営業形態もあります。多店舗を展開する大手チェーンなどでは、スーパーバイザーと呼ばれる指導員が、各店舗の様子を見て回りながら、販売状況の確認や売上改善のアドバイスなどを店長やオーナーに行います。

 

一般的な「ルート型」が本格的な提案を行うことが少ないのに対して、コンサルティング的な立ち位置で、店舗責任者や売り場担当の経営相談にのります。会社が求めるクオリティーが保てているかなどの基本の徹底、仕入改善、コスト削減などもチェック、指導します。

 

ルート型ではありませんが、スーパーバイザー型と連動する業種として、「店舗開発型」と呼ばれる営業スタイルもあります。店舗開設に適切な土地や場所を見つけ、物件所有者や地主と交渉して、新たな店舗を開拓していく営業です。

 

店舗自体が「営業中」の立札を出しているので、一般消費者が意識することは普通ありません。いわゆる商品の売り込みを行う営業のイメージとは異なりますが、スーパーバイザー型と併せて営業と言ったりもします。

(実際営業するのは店舗ですが、売上を生み出す店舗をつくり、理念・クオリティー・ブランド価値などを維持することを営業と指します)

 

 

以上、7つの営業スタイルについて解説しました。ご自分の営業スタイルは見つかりましたか? 1つだけでなく、複合型の営業になっている場合も増えています。

営業でなくても、関係する立場から見て、気になるスタイルがあったのではないでしょうか?

7つの営業スタイルを意識することで、業種・業界を超えた正業の正解を見つけやすく、応用しやすくなるはずです。

 

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

自社の営業の正解を見つけたい、プロセス見える化に取り組みたい方は こちら からご連絡ください。

 

⇨ コラムへのご意見やご感想は info@flecrea.com 

 

 

()フリクレア 代表取締役

 

山田和裕

 


(2023年03月27日)

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