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コラム

ポスト成果主義 ― ジョブ型雇用にだまされるな

 

ジョブ型雇用は失敗する

 

2020年以降コロナ禍において次の新しい人事制度として、「ジョブ型雇用」(以下“ジョブ型”)を喧伝する記事がメディアから多数出され注目を集めています。しかし残念ながらハッキリ言うと、ジョブ型は失敗に終わる可能性が高い

流れに便乗してジョブ型を薦めるのが楽なのかもしれませんが、人事に携わる者の責任として警鐘を鳴らしておかなければならないと感じます。効果も期待できず失敗する確率が高いジョブ型を進めようとする動きに沈黙することは、人事関係者として良心の呵責に耐えないのです・・・

コロナ禍で国民が苦しむどさくさに紛れて、リストラを進めるための環境整備を進めようとしているようにすら見えます。With/Post時代で経済回復を目指すべきなのに、課題解決どころかかえって経済回復の足かせになりかねないプロパガンダを広めようとする企てには空いた口が塞がりません。

人事関係者の中ではジョブ型の実現性や効果に疑問を呈し、安易な導入に懸念を示す指摘も増えてきています。(そういった良心的な記事は、ジョブ型をプロパガンダとして広げたい大手メディアで大きく取り上げられることはありませんが・・・)

 

成果主義の次は何か?

 

とはいえ、これまでの成果主義ではうまくいかないことはハッキリしています。成果主義については給与額のコントロールやリストラの道具という悪いイメージが染みついてしまっています。成果主義自体が悪いわけではないのですが、コンセプトとしてはすでに終わってしまっているので、これは「成果主義の崩壊」と呼ばれています。

このように短期的な結果ばかりを追い求める誤った成果主義のままでは業績貢献面・モチベーション面ともにうまくいかないことは立証済みなので、成果主義の次は何か?(”ポスト成果主義”)を探る動きが続いています。

ここ10年くらいの傾向は、成果主義の問題を指摘しポスト成果主義を思考するものが増えてきているのです。ポスト成果主義の候補はそれなりに存在していますが、まだこれといった決めてはありません。多様化の時代なのでその会社や組織の目指す方向や実態合わせて、様々な考え方が併存するのが健全な姿かもしれません。

 

(成果主義の崩壊に関する関連コラムはコチラ)

成果主義の崩壊成果主義の問題点成果主義からプロセス主義へ

 

ポスト成果主義の候補は・・・

 

先に書いたように最近コロナ禍のどさくさにまぎれてにわかにもてはやされているのがジョブ型です。それ以外にもOKR360度評価といったところが挙げられます。その中でも、特にジョブ型はひどいものです。その理由はこの後詳述します。OKR360度評価にはよいところもありますが、それなりの問題点もあります。

 

残念ながら外国製に弱い日本人は、相変わらず欧米流(特にアメリカ)の輸入モノマネパターンから卒業することができません。もはや海外のやり方を真似してもうまくいかないことは成果主義の悪例が証明しているのですが、とりあえずメディアが取り上げたがる中から3つの輸入モノを取り上げて、その“不都合な問題点”を解説します。

 

ジョブ型にだまされるな

 

 繰り返しますが、ジョブ型は失敗する可能性が高いです。メディアが宣伝するジョブ型に取り組むのが時代の流れというような雰囲気になっていますがとても危険です。よく考えずに流行りにのってジョブ型を取り入れてもろくなことはありません。ジョブ型の本質や問題を勉強せず流行りに踊らされると、これまでの失敗パターンの二の舞になるだけなのです。成果主義の失敗を批判した「虚妄の成果主義」という本がありますが、今度は「虚妄のジョブ型」となる可能性大です。

失敗が確実だと予測できるのは、成果主義の時の過去の失敗パターンをみごとなまでにたどっているからです。成果主義の時と相通じる3つの失敗パターンとは↓:

 

①言葉は新しそうだが中身の実態は変わっていない

 過去に流行り失敗した「職務制度」の職務という言葉を単に“ジョブ”という英語に変えただけ。ジョブディスクリプション(職務定義書 /略称“JD”)を見ても、数行程度の抽象的な文章でとても実際の評価で使える代物ではない。下の図に抽象的なよくある職務定義の悪い例を示す。その他にも職務を一言の単語で表にしただけの職務項目列挙パターンなどもある。

(図1) 抽象的な職務定義の悪い例(営業の場合)

img src=”shokumuteiginowaruirei210625” alt=” 抽象的な職務定義の悪い例(営業の場合)”/

 

②うまくいかない欧米流の真似の繰り返し

欧米では常識という常套句を使えば従いやすい日本人の素直な性格を悪用する手口。しかし、日本の採用・転職市場の実態には合わない。労働管理の歴史やメンタリティもまったく違うので日本的経営に合わはずがない。そもそも輸入元の欧米型のJDも、中身は①のようなすでに失敗しているシンプルで形だけの使えないものが多い。

 

③動機が不純

裏の目的は人を切りやすい環境を整えるため。成果主義は人件費削減だったが、人を解雇しやすくするための環境をさらに整備するという意味ではもっとたちが悪い。表面をどんな美しい言葉で繕おうとも、運用で本音が出てくるので社員は敏感に気づき、形骸化していくのは時間の問題。

 

ジョブ型に関してはかなり辛口の意見を書いてしまいました。それでも会社の上の方からの命令でジョブ型に取り組まなければならずに困っている人もいると思います。次回のコラムで「(仮題)それでもジョブ型を導入したい場合にComing Soon」と題して、その対応策をご紹介する予定です。

 

OKRはプロセスに着眼する点は悪くはないが・・・

 

OKRとはObjective and Key Resultの略です。目標(目的)と主な結果(成果)の両方に注目する目標管理手法の一種です。

 プロセスに着目する点は評価できますが、そもそものプロセスの定義や決め方が曖昧なので、これまでの定性的なプロセス評価と同様、抽象的なものになりがちです。プロセスといいながらも、KPIと同じように結果に近い“結果KPI”の寄せ集めになり、プロセスを見るといいながらも結果主義と何ら変わらないことになってしまいがちなのが惜しいところです。

 

アメリカのGoogleFacebook、インテル、日本であればメルカリなどが取り入れていることから話題になっていますがいわゆる輸入モノです。確かに、Googleなどの高い志や自主性を持ち社員のレベルの高いところであれば、あまり細かい管理マネジメントはせずに、本人の裁量にある程度任せた方が創造性を働かせられるので効果的です。しかし、どちらかと言われたことを素直にやることが良しとされ、基本の型があった方が学びやすい日本の企業ではどうでしょうか?大いに疑問が残るところです。

(比較サイト: 自主性の罠? ― 創造性は基本習得の後に生まれる自主性を育てる仕組みづくり4つのマネジメントスタイルを使い分ける

 

ちなみにGoogleの場合は目標の設定とプロセスの標準化のところをかなりしっかりやっています。まずはトップテールと呼ばれる最高の業績を上げている社員のやり方をじっくり分析。同時にボトムテールと呼ばれる業績が下から5%の社員の行動特性もトップテールと同様に分析しています。成績が芳しくないからといってすぐリストラ対象にするのではなく、適所を見つけるためのサポートの仕組みまで構築しています。当然、業績評価や昇進審査自体にもかなり時間をかけています。

 

OKRはわかりやすくいうと、成果主義とプロセス評価を足して、成果主義の結果思考を弱めプロセス要素を強めたような、言葉は悪いかもしれませんが中途半端な制度に陥りがちです。今のところ成果主義も定性的なプロセス評価も日本ではうまく機能していないのですから、目標とその達成プロセスを明らかにしないかぎり、曖昧なので成果主義と同じ失敗パターンをたどります。

 

360度評価は仲良しクラブになりがち

 

上司からの評価だけでなく、社内で連携する関連部署や同僚、部下から多面的に評価するという考え方は、直感的には悪くないのですがすでにアメリカではすでに時代遅れの感があります。例えばGEではすでに10年以上前に、他人の目を気にしてあたりさわりのない事しか言わなくなり、単なる仲良しチームになりがちだという問題が指摘され、今は360度評価を使うのは限られた場合だけです。

GE CEOのジャック・ウェルチは皮肉を込めてこう言っています。「360度評価を導入し、同僚や部下の評価も盛り込んだ。これはなかなかよかった。上にへつらい、下につらくあたる輩が誰かがわかったからだ。評価というものは、時間の経過とともに裏をかかれるものだ。たがいに耳当たりのよいこと以外は言わなくなり、全員の評価がよくなる」(原文を一部省略、修正)

組織マネジメントの分野では、業績を上げ続けるチームは、自分はここにいていいんだという精神的安定性を保つことをベースとしながらも、目標達成に向けたそれなりの切磋琢磨が求められ、厳しさと緊張感とのバランスが必要であることは常識です。仲良しチームだと相手のことを気遣いすぎて、言いたいことや厳しいことを言わなくなるので、継続的な業績達成という意味ではあまり良い結果が出ないのも事実です。

 

実際の活用法としては、直接評価そのものに使うのではなく、本人に短所を気づかせ行動変容の促すために、育成ツールとして活用するのが現実的でありおすすめです。

 

活用の良い例として、最近パワハラで社員自殺が報じられたトヨタのケースを取り上げます。新聞などで読まれた方も多いと思いますが、事件を重く見た豊田社長自らトップ主導で調査徹底と再発防止策の検討を進め、2020年から360度評価を導入しています。

トヨタでは課長級以上の管理職約1万人を対象に「360度評価」を実施。上司や部下、関係する他部署の社員、場合によっては社外も含め十数人から評価を聞き、仕事上の能力に限らず「人間力」を重視する評価基準に改めたとのことです。適性がないと判断すれば昇格を見合わせたり、管理職から外したりする場合もあり、関係者によると実際にそうした事例が既に出ているといいます。

自殺した社員にパワハラをした上司は、過去に別部署でもパワハラ事例があったことも職場で認識されていたにもかかわらず、こうした情報が社内で共有されていませんでした。また、この上司について「上位者(上司)と下位者(部下)では評価が全く違うことに驚かされたという事実も発覚しています。

 こういった背景・経緯を経て360度評価を導入したわけですが、パワハラ防止という観点では360度評価は非常に有効に機能するはずです。

 

その他の評価制度

 

その他の可能性としては、GEやアクセンチュアなどのアメリカ企業が年次評価やランク付けをやめて短期フィードバックにするという「ノンレーティング」の事例なども紹介されました。

ノンレーティングと英語で言われると何となくカッコよさそうですが、そもそも日々のコミュニケーションをよくして、OJTの中ですぐフィードバックしようというやり方は、もとをたどればかつての日本で当たり前にやっていたことなです。いきなりノンレーティングだと現場が混乱するので、日本式経営の良さを振り返り現代版に日本人自身でカスタマイズし直して運用した方がよっぽどましです。

 

ニューノーマルに対応するための〝プロセス主義®

 

最後にモノマネではなく、With/Postコロナ時代のニューノーマルに対応しながら結果を出すためのプロセスに注目する「プロセス主義®をご紹介します。

With/Postコロナの時代に合わせて、出社と在宅勤務を合わせたハイブリッドワークなどのニューノーマルに対応していくための処方箋が〝プロセス主義® です。 プロセス主義®とは、「プロセス見える化」と「プロセス評価」をセットにした、ポスト成果主義を担う新しい業績改善と人事マネジメントのことです。結果を担保できるプロセスを見える化した上で、人事評価とリンクさせ進化したプロセス評価で人財育成と業績アップを支える点が特徴になります。

 

見える化でテレワークや在宅勤務でやるべきプロセスが行われているかを確認し、成果をあげるためのきちんとプロセスを踏んでいることを、ITツールで報告~確認できればプロセス評価で報いるようにします。テレワークでもモチベーションを保ち、生産性向上につなげることができます。

 

(図2)プロセス見える化 X プロセス評価 = プロセス主義®

img src=”processshuginozu210625” alt=” プロセス見える化とプロセス評価を掛け合わせたプロセス主義”/

 

  プロセス主義®の詳細についてご興味のある方は、こちらの関連サイトをご覧ください↓

自主性を育て結果を出す“営業プロセス見える化マネジメント®

成果主義からプロセス主義®

テレワークにおけるこれからの人事評価のあり方

プロセス見える化でテレワークを成功させる

 

コロナや成果主義以前からの人事評価の真の課題

 

ポスト成果主義の話の裏には、実は新型コロナ発生前からの問題が潜んでいます。バブル崩壊以降の1990年代以降から2000年代にかけて、年功主義に代わる新しい評価制度として成果主義が導入されました。しかし、日本企業の8割以上が成果主義を導入済ですが、その同じく8割以上が何らかの課題を抱え行き詰っている状況といわれて久しい状況が続いています。

もはや成果主義がうまく機能しないことは明確になっているので、人事分野においては、上に書いたようにポスト成果主義を探る動きが続いていました。その解決のひとつの方向として、チームワークや人財育成重視など日本的経営の良さを取り戻しながら、結果偏重からプロセス重視に舵を取り直す動きが出てきているのです。

 

(図3)プロセス主義による変化対応 X 日本的経営の良いところの復活

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さらに言えば、そもそも成果主義ブームのはるか前から、日本的な人事評価制度はもっと深く大きな課題を抱えていました。そして今や、本来は人財を育て業績の継続的改善を支えるべき人事評価も、給与原資の配分手段、ひどい場合は、リストラの道具と化しまっています。

アメリカの流行りをうわべだけ真似して建前は取り繕っていますが、本音の部分では不公平な数字評価や、好き嫌いによる曖昧な主観頼みの評価から卒業できていないのです。

メディアではテレワークの環境では、どうやって働いているか見えないのだから成果主義を強めるしかないという思考停止したような意見もありますが、弊害ばかりが指摘されすでに崩壊している成果主義的な色を強めようとしてもうまくいくはずがありません。

 

日本の人事評価は時々の流行りに流されるが、本質に目を向けないまま、呼び方を変えるだけでただ移ろうばかりです。成果主義は崩壊、ジョブ型は過去の失敗版の焼き直し、360度評価は仲良しクラブ、OKRはプロセスが曖昧過ぎる。

人事評価は企業の継続的な業績改善を支え貢献するという本来あるべき方向に向けて、抜本的な方向転換(パラダイムシフト)を図らなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

(参考サイト: 本音と建前

 

 

参考文献:『Work Rules』(ラズロ・ボック) 『OKRマネジメント入門』(天野勝) 『ジャック・ウェルチ わが経営(上)』(ジャック・ウェルチ) 東京新聞記事『パワハラで社員自殺のトヨタ、遺族と和解で改善誓う 人事制度など組織風土にメス』

 

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

ポスト成果主義やジョブ型にだまされないためのプロセス主義®にご興味のある方は こちらからご連絡ください。

 

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()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2021年06月25日)

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